VOL7:チャオプラヤの憂鬱の巻

 さて、バンコクを流れるチャオプラヤ川である。タイ語で川をメーナームと言うらしい。水の母と言うほどの意味らしい。おお、タイ語を説明したりしてなんかカッコいい感じがする。ちょっと旅行記っぽいのではない
か。下川裕司もびびったのではないか。なんかそんな気がする。そいうことにしておこう。

 で、川下りである。てれてれと川沿いを移動してるとなんかヘンな人がおいでおいでしておるではない
か。なんかきったねえボート指差してスペシャルとかのたまっておるようである。なんなんすか。あー川下りであるか。面白そうだがいくら?え、500バーツ?それはちょいと高いのではないか?だってこのおんぼろ船で回るんでしょ?え、300バーツ?それなら

いいや。

と言うわけである。なんか客が少なくて貸切である。周りを見ると色々な観光用の船があるがなんかこの
船が一番ボロいのではないか?あっちの「ペニンシュラ」とか書いてあるのとかすげえかっちょいいではないか。俺様はあっちの方がいい。あれなら多少高くてもいいぞ。おい、船頭、今すぐ取って返すのぢゃ。

…………

発進。

 人の話聞いてないのではないか。発進しちゃったもんはしょうがない。沈まなきゃいいや。まあ、船はボロでも川面を渡る風は心地よく、さわやかに俺の頬を撫でていき、そしてかすかに香るこの匂いは…どぶ臭い。鼻がひん曲がりそうである。息もしたくないくらいである。なんであるか、これは。

 大体川下りといえばさわやかなもんである。そんで一緒に芸者サンとか乗ってて「ほほほほ、桔梗屋、ぬしもワルよのう」とか言いながらいちゃいちゃするもんである。なのにこの俺様の川下りの状況はなんなんであるか。

 川はどぶ臭い、船頭は年季の入った後頭部のおっさんである。ほらあれは人が住んでるんですよ、って言われて木造船を見たらその便所らしきところからぽとりぽとりと何かが川に落ちていくではないか。
あれは「う○ち」ではないのか。しかもこれは垂れ流しというやつではないのか。そんなもん見たって嬉しいわけないのである。

なんか吐き気がする。

 もう分かった。チャオプラヤはでっかいどぶ川なのであるな。船頭、もうよい。余は満足ぢゃ。早く帰ろうではないか。のう。え?すねいくふぁーむ?コブラのショー?それはちょっと面白そうかも…

 と言うことですねいくふぁーむである。すねいくなんとか言うわりには鷹とか豹とかサルとかいろいろ居て動物園のようである。まあ、それはいいとしてなんで船頭お前までついて来るのぢゃ。公家言葉がやめられんではないか。まあ入場料は一人分のようだったのでいいけど。「さあ、ポンキッキの時間ですよー」てなカンジでお姉さんではなくおっさんが呼ぶので、ショーの行われるところへ行った。横に座っているのはニホンジンの兄ちゃんとパッポンかタニヤかナナか知らんけどそこらへんに居そうなケバイカッコウをしたおっぱいボヨヨン姉ちゃんである。君も怪人一味であるな。それはミサイルになるのかとか聞きたかったが横の兄ちゃんにどつかれそうだったのでやめた。

 それにしても羨ましい、いや不健全である。俺様の横は推定年齢50歳のタイのおっさんである。この違いはなんなんだ。蛇が近づいてきたらお姉ちゃんはキャーキャー言って抱きついとるではないか。俺様の横ではおっさんが欠けた歯を剥き出しにして笑っておる。

…………

 ち、ちくしょおおおお。何だか楽しくないぞおお。損したような気になるのはなぜであるか。俺様個人の感情の爆発は置いておいて、ショーの内容はなんかコブラを怒らせてかかって来るよう仕向けといてそれをヒラリヒラリとかわしていくみたいな感じで、結構見ごたえがあった。どうせ牙抜いてんでしょとか思ってたらその後牙から毒をコップに抽出して見せたりして、びびったりもした。

 で、その後も川下りは続いたのであるが、どぶの匂いとなぜだか知らぬ敗北感で、また今思い出したらやってられなくなったのでもうやーめた。