ボーナス

今年も残り一ヶ月を切り、会社も年度末ではないが一年の最後の頑張りに入った。来年には金型部門の新工場建設計画もあり、今年の業績がいろいろ関係してくる。また新しいお客様の製品も目白押しだが、立上げに四苦八苦といった状態でもある。
ここを乗り切らなければ来年の結果は目に見えている。
社員全員に叱咤激励の毎日である。

そんな中、その追い込みを左右する一つとして年末のボーナスがある。私も日本にいた時は当たり前のようにボーナスは貰えるものと考えていた。それも年2回、最低でも何ヶ月という単位で。
タイでもほとんどの会社で毎年ボーナスは出ているだろう。当然、従業員も楽しみにしているはずである。
中には社長との話し合いで、
「社長は私達のお父さんと同じだから、どんな事があってもボーナスはくれますよね」
と言った奴もいたそうだ。
(タイはお金のある人が無い人に金を与えるのが当たり前になっているから?)

しかし我社は今一つ業績が良くない為、今年も社長が相当悩んでいた。昨年は今年以上に悪い年であったが、社長からは皆の頑張りを黙ってみている訳にはいかないとボーナス支給が実行された。
今年は昨年よりは何とか良くなったが、それでも苦しい台所事情である。
   「ボーナスとは利益の分配なんだ」
   「儲けがなければボーナスなど有り得ない」
と口癖のように言っていた。

しかし今年も悩みに悩んだ末に、昨年同様ボーナスの支給が決まったのである。
社長としては来年への期待料という意味も含めての支給である。
タイでは大体の企業が1ヵ月から2ヶ月程度の支給で我社も同様であり、あとは各人の査定での差額となっての支給になる。それも一年以上の勤続が必要になる。(一部特例もあるが)

ところが新聞発表等をみると、私の会社が仕事を頂いている自動車関係のお客様のそのまたお客様である大企業のT社やH社などは7.5ヶ月とか6ヶ月とか夢のような支払い額が出るようである。日本では全く考えられない数字だ
ろう。(ただ今年は自動車業界が好調であったからと思うが、その下請けである我社は・・・)

先週も私の部下が、
「Sさん、T社のボーナスが7.5ヶ月って知っていますか」
と半分呆れ笑いで言ってきた。(羨ましいのは当然である)
少し離れたR工業団地には、もう片方の自動車メーカーのH社もあり従業員は興味津々なのである。

聞いた話だが、H社や私が以前にいた光学メーカーのN社等が工場拡大で新規従業員を募集した時など、今私のいる工業団地からごっそり作業者が移ってしまったといような出来事もあったそうだ。
タイ人的考えでいけば、まず給料が高くボーナスがよければそこに移りたいのは当然であり、またすぐそれが実行できるから具合が良い。

しかし、我社は我社のやり方でやっていくしかない訳で社長も、
「移りたい人は移って結構です」
と全員を集めたミーティングで話をする時がある。
管理・指導する立場の者としてはドキッとする言葉である。
長く働いてくれれば技術も技能も向上する訳で、私達の代わりに管理が出来るようになり、とても助かる。
しかし、それがあまり年数が増すと給料やボーナスも増える訳で我社のような弱小企業ではどっちをとるか難しい問題でもあるのだ。
これは会社が少しずつ大きくなれば、また違った形にもなっていくだろうが。
(出来る限り早くそうなっていくようにしたいのが本音だ)

どちらにしても、今年もボーナス支給は決定した。
これで、また従業員一同頑張ってくれれば来年への道が開けると思っている。
ただし、ここでまだ一つ大きな問題が残っている。
それは、
  《我々日本人にボーナスが出るのかどうかという事である》
もし無かった場合でも、来年も今の会社で頑張るしかないすーさんなのである。

 管理人から
管理人はサラリーマンではないため、ボーナスをもらうよりも払う立場にいる。もらって当然と思っている人が多いのだけど、すーさんの社長同様、儲かってないのに払ういわれはない、と思ってる。と言うか管理人のところはあまりに零細なので、日々ボーナス代わりにお小遣いを上げているようなものだけど。ところですーさんのボーナスは出るのでしょうか?これによって次回の飲み会の行く店が変わるだけに、管理人にも目の離せない事態である。。。