いざ出陣!!

 2003年4月17日、いよいよ初出勤の朝である。
 前々からの連絡で、午前6時20分頃に社長が車で迎えに来て下さることになっていた。
 自分は、やはり初日と言う事もあり緊張からか自分で決めた起床時間より早めの午前5時起床になった。妻はもちろんだが母親や姪達も気を使って起きてくれていた。

 やはり社長を待たせてはいけないという、いかにも部下らしい気持ちで約束の時間よりチョット早い6時15分位に表に出たが、既に社長は来ていた。
(失敗、失敗、もう5分いや10分早くであったか)

 前回は総務部長が家を探すのに手間取ったが、今回はその道に迷った総務部長が一緒で、運転手も前回の運転手だったので確実に来る事ができたようだ。
 社長は早く着いた事と一般のタイ人が住んでいる所が珍しかったのかコンドーの周りを見て歩いていたようだ。ただ見た感想は何も話されなかったが。
(多分、私がこんな所に良くいるな〜と思っていたのかもしれない)

 余談だが、普通日本人駐在者はセキュリティー等の事もあり会社が用意したバンコクの中心地の高級アパートに住む事が多い。月家賃も相当な額になり会社がある程度補助をしての居住になる。しかし私の場合、持ち家という事もあり契約で家賃が給料には含まれていない。
(もし貰っても少ない額と思うが、今後もずっとだから会社とすれば随分助かるはず?)

 話を戻すが、社長夫妻は朝が非常に強いという事をあとで聞いたのだが社長達が滞在している(社長は月の半分がタイ)高級住宅地から私のいるコンドーまでは30分以上かかるので、社長は5時前の起床となったであろう。
(何とも、私に対する最初の気使いは相当のものがあった)

 社長車に乗り込み会社へと向かう事になったが、私の家を出てすぐ道路は渋滞になっていた。(まだ朝6時半なのに)
 何とか30分位でアユタヤ方面に向かう1号線に入った。そこからは車のスピードは最高130キロ位で突っ走った。アジアンハイウェーも同様である。平均時速は1号線・アジアンハイウェーでは100キロ以上になる。
 車を運転する人ならわかると思うが、平均で100キロと言うのは結構なスピード維持なわけで、ドライバーの気の使い方は相当になるはずだ。

 日本の高速道路を毎日通勤するのと同じなのだが、違うのはスピードを出した車の多さと道路の状態の悪さである。
 スピードを出した車は半分以上がウインカーを出さないのでカーレース状態での運転となる。
 それに各会社が従業員の通勤の為に用意するバスが危険走行に拍車をかける。
 また、多分重量規制はあるのだろうがそれをオーバーしたトラックが物凄い数で走っているので、道路の痛みも早いのだろう。あちこちがでこぼこである。

 これからは毎日これを繰り返す事になると思うと少し気が引ける。
 貴重な睡眠時間になるはずなのだが、おちおち寝ていられないかも知れない。

 そんな状況の中、約1時間で会社に到着した。
 早速、工場長他日本人スタッフに挨拶をして応接室に入った。
 ここでやっと正式な辞令をもらった。
《私がタイの会社の従業員になった瞬間である》
 実際小企業なのでそういった形式的なモノはないと言われたが、無理やり作って頂いた。

 やはり自分の新しい門出には、何か証明できる物が欲しかったからである。

 そんな何とも簡単な入社式の後、すぐに作業服に着替え次の行動になった。
 私は一応QC(品質管理)のマネージャーと言う肩書きになり、そのセクションのタイ人との対面及び打合せとなった。
 今まではタイ人がマネージャーをやっていたが、私の配属によりそのタイ人マネージャーはアシスタントMとなった。
 別に格下げではなく今まで通りなのだが、上に日本人が立った為の肩書きの変更に過ぎない。基本的にタイ人マネージャーが部下を管理し日本人は会社全体を管理するというのが、今回入社した会社のシステムである。

 打合せには、そのアシスタントMの他にSV、LEADER、タイ人の工場長他のセクションのタイ人マネージャーが勢揃いした。
 以前の会社では、タイ人マネージャーは一人しかいなかったので、最近のタイの日系企業の変化がそこで一つ感じられた。
 現地化が進んでいる証拠である。
 私の会社もその体制がある程度できていたのである。

 自己紹介が済み、社長から通訳を通じて今後の職場体制・作業の進め方等が話された。その中でやはり小企業ゆえのQC活動の強化が厳しく言われ、私がここに配属された最大の目的が再確認された。
 自分としては、違った分野での出発なのでそれだけで大変なのだが会社全体も見ていくとなると、今後寝る間も惜しむ事になるだろう。

 一日目という事もあり、見るものも聞く事も全てが新鮮に感じられたが、何とも言えない武者震いがする気持ちになった。
 午後からは早速職場での作業が始まり、打合せにも参加した。
 ただ、何がなんだかわからないままのものであったが、アシスタントMが結構やる気がありそうなので少し安心した。
 (しかし、このタイ人AMは後々いろいろな問題も起こすのであった)

 そして、長いような短いような久々のタイの会社での一日が終わった。
 長い長いタイでの仕事人生が幕開けとなった日である。

 管理人から
 タイでとうとう働き始めたすーさん。さすがに初日は緊張の連続だったようです。とにかく本人もまわりも気を使うことに終始したであろう初日でした。今回のすーさんの仕事は前の会社と業務が違うらしく「まおちゃん、たいへんだよ〜」とこぼしておりました。タイで働くのは日本で働くことよりたいへんなことが多いんですよね、いろいろと。