大どんでん返し
約9ヶ月の再就職活動をしてきたが、世間の厳しい風をモロに感じていた。
日本での活動は諦め、タイで現地採用覚悟での就職活動に入ろうと考え、次週には訪タイという矢先のコンサルタントからの電話であった。
「私がこれから言う番号の会社にすぐ電話してみて下さい」
事前に言われたのはタイで仕事が出来るかも知れないという事だけだった。
戸惑いながらも、すぐに教えられた会社に電話をした。
私:「もしもし・・・・・、そういう訳でお電話をしたのですが」
会社:「お話は、伺っております。それでは・・・・にお会いしましょう」
私:「わかりました。それではよろしくお願い致します」
こんな短い会話で面接日設定となった。
電話をしてから4日後、いよいよ面接日がきた。
あいにくの雨の日だった。(天候はあいにくだが、気持ちは燃えていた)
横浜市の郊外にある、東京にもほど近いここ十数年で高級住宅地に変貌した田園都市線の、とある駅での待ち合わせである。
駅での待ち合わせ、お互いの面識がないので携帯電話で連絡しあったが、柱の影でお互い話している声が聞こえていた。
携帯電話を持ちながら顔を見合わせた。
お互い笑ってしまった。(何となく気が楽になった)
小さな会社だったので、本社ではなく駅近くのショッピングセンターの中の喫茶店での面接になった。
駅で待ち合わせした総務部長、そしてあとから社長と夫人が来られた。
早速、私は自分の履歴書・経歴書(英文含む)をみせ自己紹介を行った。(今まで支援会社で学んだ面接時の作法を思い出しながら)
私の経歴とこの会社での作業内容が随分違っている事はわかっていた。
お互いの共通点は製造関係の仕事という事だけであった。
そんな自己紹介が終わりかけるかどうかになったその時、社長がいきなり、
「それじゃ、一緒にタイで頑張って下さい」
と言ってくれたのである。
「仕事は現地に行ってから覚えればいい。まずはタイ人の管理をお願いする」
とも言われた。
「よろしくお願いします」・・・即決であった。
あっという間の出来事である。鳥肌が立ったのを思い出す。
何という事だ!!アンビリーバボー!!オーマイゴッド!!
(ありったけの言葉が頭を駆け巡った・・・)
まさしく私が望んでいた仕事内容そのままだったのである。
こんな事が本当にあるのかと夢のように感じた。
駅から喫茶店に行くまでの間にある程度の内容は総務部長から聞いていた。
タイで働けるかもというコンサルタントの言葉も私を前向きにしていた。
現地条件等はどうでも良かった。
まず日本側採用でタイでの勤務、私の求めていた最高の条件であったのと、仕事内容が後押しをしてくれた。
しかし本当に決断出来たのは、間髪を入れずの社長の言葉であったのは言うまでもない。
そして、会社からは面接したその日から入社へ向けての手続きを始めますと言われた。
これもまた驚きであった。
(皆さん面接したその日からですよ、信じられますか)
今思うと、俗にいう《相思相愛》というやつだったのか。
タイで働いてくれる人材が欲しかった会社とタイでの仕事を探していた私が、偶然同じコンサルタントを挟んで同じ線上にいたからの出会いであったのだ。
こういう運も実力のうちと言うのだろうか?
その日からしばらく、舞い上がった自分がいた。
まだ仮契約だったのに、知り合いにも毎日のように電話・メールで連絡した。
あとで総務部長から聞いた話だが、実は総務部長とコンサルタントは以前に同じ銀行にいたという。
面識はなかったが今回そのネットワークがまれに見るタイミングでつながったというのである。
人材が欲しかった総務部長はいろいろ手段をさがした中、以前いた銀行に電話をしたそうだ。すると銀行は、
「それなら以前ウチにいた人が人材の紹介等をするコンサルタントをしている
ので紹介しましょう。・・さんです」となったのである。
そして、総務部長はすぐ電話でコンサルタントに、
総務部長「・・・・という訳でこんな人材を探しているのですが」
コンサル「ええェ〜〜、何とそれならピッタリの人がいますよ」
総務部長「では、すぐ会えるように連絡して下さい」
これもあっという間の会話だったそうである。
そして今回の契約の成立となったのである。
そこまで期待されているとわかった私は、他の活動を全てキャンセルする事にした。
頭の中は、この会社で第二の仕事人生をと即決していたのである。
タイの面接設定があった6社には人材紹介会社を通じて、個人的に連絡してあった所はメールで断りを入れた。
(当然、丁寧且つ穏便に)
今まで苦労して、もう日本ではどうにもならないと諦めかけ、面接の為にタイに行く予定だった一週間前の電撃的な話であった。
私にとっては、まさしく《大どんでん返し》となったのである。
管理人から
まさに『大どんでん返し』な展開になってきました。この時のすーさんの様子はすーさんから頂いたメールですぐ分かるほど興奮が伝わってきました。タイで仕事をする以上、日本採用と現地採用ではまるで趣が変わってきます。もちろん駐在だからと言ってすべてがよい訳ではありませんが、現地採用組があこがれる話であります。すーさんも諦めていた時だったので、人間だめもとでもやって見るもんだと思わせてくれる出来事でした。