日本語の教え方

 少しタイ語が出来るようになると、タイ人に日本語を教えてくれと言われことが増えてきます。が、やはり世界的に珍しい文法である日本語を教えるのは容易なことではありません。日本語の何が難しいかと言われれば、タイ人はみんな揃って、「漢字」と答えます。が、実際に難しいのは敬語と助詞の使い方ではないかと管理人は思っています。これは日本人でも間違うほどで、ましてやそういう概念のない国の人たちからすると、ほとんど理解不能の世界ではないかと思います。実際に、極楽タイランドの中には<マッピーのタイ講座>があって、その中でタイ人であるマッピーの文章を見ることが出来ますが、やっぱり助詞と語尾はかなり間違っていることに気づきます。ある時マッピーに説明しようと思ったのですが、なかなか説明するのに苦しんでいた時にちょうど日本語教師であるAIさんが教えてくれたことを、掲載させて頂くことにしました。今回のテーマは「助詞」であります。(メールでのやりとりでしたので、そのまま文章を載せています)ちなみにAIさんは、昔スリンで日本語教師をしていた方で、現在は日本で日本語教師をしています。ですので日本語教師についても少し文章をいただいてます。日本語教師になりたい方も是非一度ご覧ください。THANX>AIさん

日本語教師について
助詞「に」と「へ」の違い
日本語学校での勉強方法


 日本語教師について

 日本語・・・maoさんのおっしゃる通り、奥が深くてちゃんと教えるのはホント難しいです。
 でも海外で日本語を教える場合、ほとんど資格などは必要ないので、「ちょっと日本語でも教えに海外に行ってみようかな」っていう日本人は非常に多いです。
 実際に海外では「こんにちは」からの初級学習者が多いので日本人ならなんとか教えられちゃうんですよね。
 でも、日本国内の日本語学校っていうのはまた違って、日本語教育振興協会って言う所が認定している日本語学校には資格を持っている人しか働けません。
 ここでは、日本の大学進学を目指して留学してくる学生にかなり高いレベルの語学力を身につけさせなきゃいけないので教師にも高い技術が求められています。
 ここでは、海外の教師経験は経験としてほとんど扱われないのです。
 海外で日本語教師を名乗ってる人の中にはいろいろあると思います。
1 純粋に海外で日本語を教えたい
2 日本国内で日本語教師になりたいがすぐには就職が無理なので少し海外で教えてみてから・・・。
3 海外生活をしたいので、その方法の一つとして日本語を教える


 
私は最初は1でしたが、「やっぱ日本で教えてみなきゃ本物にはなれん」と思って、日本に戻ってきました(笑)。
 おかげで、スリンにいた頃ののんびりお気楽モードとは逆に現在、100人を超える外国人受験生と葛藤の毎日です。
こんな話をしだすと、キリがないのでここらへんで止めときます(笑)。


 助詞「に」と「へ」の違い

 maoさんも日本語を教えられた経験があるんですか?
 「に」と「へ」ってよくある質問ですよね。
 「に」は場所を表していて、「へ」は方向を表しています。
 なので、「トイレに行く」はその場所に行くことで、「トイレへ行く」はトイレという方向へ向かうことです。結果的に到着するのは同じ場所なので意味もほとんど変わりません。
 これを、外国人に説明する場合は→や・を用いた図を書いて説明すると分かり易いと思います。
 他に「に」は「へ」より狭い範囲を表すとか、いろいろな論があります。
 「駅に行く」は駅の中という狭い範囲を示しますが、「駅へ行く」は駅を含めその周辺も示すとか・・・。
 実際、教師によって説明の仕方や見解は様々です。
 まー、この「に」と「へ」の違いは、気にしないで使わせていいと思います。

 「に」と「と」は「彼に会う」と「彼と会う」の違いでしょうか。
 前者は私が一方的に会いに行く意味が強く、後者はお互いが会うという意味が強いです。
 「彼に相談する」は自分の悩みを彼に聞いてもらう場合です。
 「彼と相談する」は私も彼も共通の悩みを2人で話し合っている場合です。
 だから、「話し合う」や「討論する」や「争う」等の一人ではできない動詞は必ず「と」を使います。
 「彼と話し合う」「彼と討論する」「彼と争う」です。
 「彼に話し合う」は変ですよね?

 以上が、私が説明する場合の例です。


 日本語学校での勉強方法

 日本語教育振興協会が認定している日本語学校はほとんど「直接法」って言う日本語しか使わない教授法を使っていると思います。
 一クラスには何ヶ国もの学生がいるので、全て日本語でやります。
 今度は教授法の話になりますが、日本人が中学で英語を習う時は「文法訳読法」っていう教授法ですよね。
 この場合、外国人は日本人に「ありがとう」と言われたら、それを頭の中で母国語に訳して、それに対する返事を母国語で考えてそれをまた日本語にして発話する、というめんどくさい流れになってしまいます。
 日本語を勉強しているタイ人の場合、頭の中は、

 「ありがとう→コップクン→マイペンライ→どういたしまして」

という感じです。
 頭の中に常に学習語と母国語が混在してしまいます。
 これが日本人がなかなか英語を覚えらない所以じゃないかなって思ってます。
 でも、直接法は媒介語がないので学習語だけで考えることができると思うのです。

 「ありがとう→どういたしまして」

 ちょっと分かりにくいですよね・・・。
 簡単に言うと、赤ちゃんが言葉を覚えていくような状態です。
 赤ちゃんが言葉を覚えるために、媒介語は使いませんよね。
 視覚や聴覚など全ての感覚で得た情報を周りが与えてくれた言葉に変えて行くのかな・・・。説明難しいですけど・・・。
 例えば、一番最初に教室に入って「こんにちは」って教師が言えば、学習者は全然日本語知らなくても「こんにちは」って言います。
 「あ、これは挨拶だな」って感じるんですよね。
 この場合、知識が少ないので学習者は夜も「こんにちは」ってもちろん言いますよね。
 その時は教師が「こんばんは」って言えば、学習者は「あ、夜はこんにちはじゃなくてこんばんはだ。こんにちはは昼の挨拶だ」って感じます。
 もちろん、こんなめんどくさいことは日本語学校ではやってませんが・・・。
 ド初級の段階はメインテキストの他にその訳本(いろいろな国のバージョン)があって、学習者は事前に予習ができますし、授業の途中で「先生何言ってるんだ?」って思ったら、その訳本
を見直すこともできます。
 そして、初級が終わる頃になればもう自分の日本語の知識の中だけで言葉を増やすことができます。訳本は必要なく、分からなかったら教師に質問をもとめ、教師も学習者が知ってる言葉の中で新たな言葉の説明をするのです。
 よく「日本語教師は英語ができなきゃダメなんでしょ」って聞かれます。もちろん、ビジネスマンを対象とした会話教室なんかでは、欧米人に対して英語と日本語を使って教授する方法もあります。年齢が高い人にはその方が効果的かな。
 
 学習者によって適切な教授法は様々だと思います。