手術 その1

 タイと私、どっちがアバウト??

 この「手術」編は、当時の日記に多少手を入れて作ったものなので、ちょっと情報局の意図からはずれてしまいますが、タイで手術をするとこういうことになると言う体験記です。


 生まれてこのかた縫ったことさえなかった私が、タイに来てから3度の手術を経験することになりました。えーっ、タイで手術ってやばくない??って思った人も多いかと思いますが、タイの手術のレベル自体はかなり高いようです。医者はかなりのエリートですから、日本人の医者よりも外科的な部分では上な事も多いようです。ただし、ここはタイだと言うことは間違いないことなので、やり方考え方が思いっきり日本と違うことが多いです。簡単に言えば、早いうちに切っちゃえ!って感じかな。あと、医者がそこの専属でなく、いろいろな病院を回ってるという人も多く、時間に決まりがあるって言うのもあります。

 そんなことを言ったものの、海外旅行保険が私にはついているので、基本的にはすべてフリーで見てもらえると言うこともあって、私は調子が悪くなるとすぐ病院に行ってしまうわけです。

 バンコク市内には保険が効いて日本語が通じる病院は結構あります。有名なところで、バムルンラード病院、バンコクジェネラル病院、ラマ9病院、サミティベー病院等々、日本の病院に勝るとも劣らない病院があります。(ちなみに私は全部行ったことあります…)特に前述のバムルンラード病院は、造りが高級ホテルと言った観で、入院してるのか泊まりに来てるのかわからなくなります。

 そして、私が2度ほど入院させていただいた病院もこのバムルンラードになります。ここは、日本語通訳だけでもかなりの数がいます。他の病院は数名ですから、この辺も安心なところです。ちなみに最近ここはLASIKで有名です。毎日かなりの数の患者がこの手術を受けているようです。私もここで「右目」だけ
手術してもらいました。何で「右目」だけかって?それはこれから説明することになりますので…

 2000年4月、私はタイに住んでいたわけですが、とある病気にかかって、行きつけのバムルンラード病院に通院中でした。何気なく通訳と話をしてたらLASIKの話が出てきました。その彼女もLASIKをしたらしく、その話をしてくれました。お、忘れかけてたことを思い出した〜!って感じで、そのまま検査してもらうことに。その時言われた料金はたしか25000バーツくらいだったと思いますが、私の頭の中には「日本の半額以下!」って事しか残ってないです。そんな軽い気持ちで挑んだLASIKの検査だったのですが、そのLASIKの先生はなにやら難しい顔をしながら、しきりに首をひねってる。実はこの段階で日本語通訳はいなかったので、英語とタイ語でなんとかコミュニケーションしてたのですが、隣の先生に見てもらってくれとのこと。なんだか全然訳わからないうちに隣の先生の待つ診療室に。ってここ、全然検査が違う。なんだか分からんうちに、言われたことが、

「君はLASIKできないよ。眼が壊れてる。」

 は?なに言ってんのこの人、って思ったんだけど、いまいち理解できなくって、よくよく訪ねると、

「君の左目の中が壊れていて、LASIKをすることはできない。でも君はラッキーだ。まだ軽いうちに発見できたからすぐ治るよ。」

 と、しきりに「ラッキー」を連発する。嫌々、全然ラッキーじゃないぞ、俺がしたいのはLASIKなんだぞって、さすがにちょっとむっとしてきたので、ここにきて初めて日本語通訳を呼ぶことにした。するとまたこの通訳までが「ついてるついてる」の連発。いくら友達でもね…。で、よくよく確認してみると、実は左目が「網膜剥離のなり始め」なのだそうだ。は????「網膜剥離?」それってボクサーとかがなるやつじゃん。俺最近殴られてないぞ。ってな事は別にしてもなんだ〜?って感じ。それから現在の眼の状態について語られた。「眼の中の水が悪くなっていて、それが網膜をはがしかかってる。」で、次に出たせりふが

「明日、暇?」

 おい、デートの誘いか?って男の先生だけど…、なんてぼけてる間もなく、「明日土曜だから暇でしょ。一日入院すればいいから日曜には家に帰れます。手術は簡単なものです。」って、勝手に決まっちゃうわけ?でもそんな提案にアバウトな私は、「あ、いいですよ、明日で」ってつい言ってしまいました。

 さて家に帰ってそのことを奥さんに伝えたら、「???」でしたが、まあ、一泊で終わる手術じゃんって思って、ホント軽〜い気持ちで準備して翌日病院に行ったのでした。

 いやあ、それにしてもこの病院、たいていの日本人は門構え自体にビビル。設備は日本以上。電子カルテだし…。スターバックスその他のレストラン完備。日本語通訳多数。保険持ってないで行くとかなり高い。(私の子供がここに二日入院したら2万バーツ以上とられた…。)

 でもって予定の時間に行くと、ホント軽い感じで検査が始まって手術になった。もちろん全身麻酔。初体験だが、これはこれでキモチイイものだ…。しか〜し、起きてからの痛みは半端なものではなかった。なんて言うか、左目と言うよりも、スペシャル偏頭痛みたいなものが襲ってきて、とても普通でいられるものではない。当然痛み止めを飲みながら悶絶しつつ夜を過ごした。朝になるとどうにか耐えられるくらいの頭痛になったような気がしてきた。とはいうものの、まだ左目が見えるのかさえわからない。これはかなり不安材料だった。にもかかわらず、痛みが落ち着いたと言うことで、医者は退院OKだと言う。まあ、OKならいいかと思って退院してしまった。

これが失敗。部屋に戻って見える右目で何とかネットを使って初めて網膜剥離について調べた…(今更かと思われるでしょうが)。すると、日本では最低1週間入院するらしい。それを見たらまた頭が痛くなってきて、そのまま病院に戻って再入院することになった。所詮、気持ちの問題なのかもしれない…。つんざく頭痛の中、嫁さんとお姉さんに見守られながらその後4日ほど病院で過ごした。さすがに左目の眼帯を取ったとき目が見えたのは嬉しかった。が、左目はいわゆる白目が一切存在しない、まるでウサギのような眼になっていた。充血ではなくって真っ赤。マジで気持ち悪かったっす。今でもその名残が残ってます。

 この後左目は、悪かった視力を一段と悪くして、現在も無事活躍中。検査に行って何回目かの時に初めて、どういう手術をしたのかまじまじと聞いたところ、

「左目を取り出してシリコンでくるんだ」

 とこともなげに言ってくれた。私がそれまで知っていたのはシリコンでくるんだという部分だけだった。たしかにいったいどうやってシリコンで目をくるむのか疑問には思っていたのだけど…。タイの医者もアバウトだけど、それ以上に自分自身がアバウトらしい。

 それから約半年、その左目の検査のためにせっせと通院していた私は、またも冗談で、「左目がだめなら右目だけでも」と、右目だけのLASIKを希望したところ、すんなり受理。ただし、それに意味があるか分からんよ、と釘を差されたが。

 そしてまたしても手術は次の日。オイオイ、今までその右目にもコンタクト入ってたのだぞ?って思ったら、ソフトだったら今はずせば大丈夫だって。相変わらずアバウト。で、次の日に言われたとおり、病院に行ったところ、いろんな検査をして、(この辺は「タイでLASIK」参照した方が細かいです。何せ、彼にアドバイスしたのも自分だけど、まったく細かいことに気を遣ってないので)でもって。目に焼き(レーザー)を入れられた。あっという間。自分的には痛くもなく、これでいいのって感じ。ここでゆっきーに迎えに来てもらっていたので、一緒に帰った。彼も興味があるようだが怖いらしい。私は人身御供になるのだ!なあんて思ったね。その後、私の私の友人たちがこの手術を受けることになるが、まだ失敗という話は聞かない。

その2へ続く