市場とお坊さん
子供の時、朝に母は私を市場へよく連れて行きました。
私の家は自営業で、住み込みの店員に三食出す事になっていたので、母は毎朝市場へ材料やおかずなどの食べ物を買いに行かなければなりませんでした。
私を連れて行くのは、私に市場での買い物を覚えて欲しいのと、モノを持つのを手伝って欲しかったからです。
その市場は私の家からあまり遠くないですが、歩いて行ける距離ではないので、毎朝車で行っていました。
タイの市場では買い物をする事が出来るだけでなく、徳を積む事も出来ます。
それはお坊さんに食べ物を差し上げる事です。
お坊さん達は毎朝市場の前に立って人々が食べ物をくれるのを待っています。
持ちろん私が行っていた市場にもお坊さんに食べ物を差し上げる事が出来ました。
私はしばらくの間、その市場でよくお坊さんに食べ物を差し上げていました。
そして、いつも食べ物を差し上げていたお坊さんがいました。
当時、そのお坊さんはとても若く見えるので、まもなく還俗するだろうと私は勝手に思っていました。
が、その市場へ行くたびにそのお坊さんが市場に立っているのを長い間見かけていました。
そのお坊さんが市場に来る時間はほとんど同じ時間でした。私の知ってる普通托鉢する時間は朝6時から8時くらいまでですが、そのお坊さんが来る時間はいつも8時くらいでした。ですから私はとても疑っていて母に聞いてみました。そうすると、そのお坊さんのお寺はもう一つの市場にあるから、たぶんまずそっちの市場に行ってから、その市場へ歩いてくるのではないかと言われました。
それから何年も経ちました。
私も長い間その市場へ行っていなかったけど、そのお坊さんはまだ来ているのかなと気になっていました。そしてある日たまたまその市場の前を通りかかったら、目の前にそのお坊さんが立っていました。
私はとてもビックリしました。そのお坊さんは相変わらず他のお坊さんから離れた場所で静かに立っていました。
私はそのお坊さんに対しての信仰がますます篤くなっていきました。
そしていつか都合のいい日に、久しぶりにその市場へ行ってお坊さんに食べ物を差し上げようと思っています。