VOL4:おっぱいボヨヨンあんまさんの巻

 水着女の猛攻を振り切り、なんとかホテルまでたどり着いたのだが、到着予定が大幅に遅れてしまった為フロントでいきなり大目玉をくらってしまい、なんだようそれくらいの事でそんなに怒るなよう俺だって客なんだぞおってな感じでちょっとイジイジしてしまったのであった。

 キーキーキャーキャーとうるさいサルと化したフロントのおばはんはほっといて、ボーイに促されてエレベーターで12階に向かう。このボーイがまた色が黒くてゴジラみたいな顔のくせにやたらひとなつこく、いろいろ話しかけてくるので俺様も持ち前のタイ語力を発揮して答えてやった。

「こんにちは。」

 結局俺が話せるのは「こんにちは」だけであったが、それがどうした。俺の勝手である。部屋の設備をひととおり説明してもらったところで、ゴジラがにこやかに言った。

「マッサー?」



 何を言っておるのか。マッサー?俺の名前はマサではない。さらにマサなんてよく分からんものは欲しくもないのである。ゴジラはマッサー、マッサー言いながら俺の肩をもみもみしだすのであった。なるほど、マッサーとはマッサージの事か。ならば検討してやってもよい。いくらかと尋ねると1時間200バーツだという。約800円である。うむ、よかろう。ここはお前の顔を立ててやろう。頼む。オーケイ!とかなんとかぬかしながら、ゴジラは15分後と言い残して去っていった。

 何はともあれホテルへ着いた。今日を通して俺の野生味も増し、そこはかとなく旅行者としての風格も出てきたような気がする。どこらへんがか、と聞かれたら大体うなじからつむじのあたりというところか。俺のことを旅行の鉄人と呼んでもらってもさしつかえない。

 うおおおお!ここはタイなのだ。と突然さけびたくなった。タイと言えば大山倍達がムエタイの王者ブラックコブラを破った土地であり、山田長政というお侍が暗殺されたところであり、いまや日本人が犯罪に遭う確率No1の街であり、バンコクではエイズがすごく多いらしいし、あれ?いいとこないではないか!まあでも悪いとこもいいとこも清濁あわせて見てやろうという器のでかい俺様なのであった。

 さあ、シャワーでも浴びようかと思ったところでドアをノックする音がした。おお、マッサーというマッサージをやるのであった。じじいかばばあか知らぬが気持ち良かったらいいな。うろうろして疲れた足の裏を念入りにやってもらわねばなるまい。ちょっと酸っぱいが、かぐわしいと言えなくもないので問題なし!と言う事にしておこう。

 はいはい、返事は一回にしなさいね、はい。とかお母さんみたいな事言いながら、ドアをあけた。よく来たな、あんまさん。

・・・・・

あんま・・さん?

 あのー、おっぱいボヨヨンでへそ出したあなたは、あ・ん・ま・さ・ん?

 若くてぴちぴちしてて化粧もばっちりのあんまさんがタイではポピュラーなのか?ちがーう!俺が想像してたのとぜーんぜんちがーう!俺はだな、確かにそういう気持ち良さもきらいではない。いや、どちらかというと好きだ。大好きだー!!とか川原で夕陽に向かって叫ぶのもやぶさかではない。

 だが、である。今日はちがうのだ。酒も入ってるし、疲れてもいる。しかも足は酸っぱいのである。こんな若いコがあんまさんとは思わなかったと伝えようと思うのであるが、俺様の高回転脳みそにちっとも血がめぐらないのである。おかしい。推測によると体中のすべての血が下半身に集中しているようである。しか
も手は勝手にドアを開けておるではないか。いかーん!ピーンチ!ここは持ち前の意志の強さで、キャンセル料としていくらか取られてでも追い返さねばなるまい。

おい!お姉ちゃん!
………………こんにちは。

 ってまた挨拶かい!とつっこみが入りそうであるが、まあそれは置いといて上着でも脱ごう。
追い返すんじゃなかったのかとか言われそうであるが、そこは大人の事情なりなんなり、まあその生きていればいろいろあることだし、妙に前かがみになってもいるし、俺は俺で生きていくからお前はお前で生きていけ。ということでまことに不本意ではあるが、マッサージをしてもらわねばなるまい。

 ん?おお、ズボンも脱ぐのであるか。パンツも?あ、パンツはいいの。よーし、用意はいいぞ。いつでも来―い!足からであるか。うん、気持ちよさそうであるが、仰向けのままではちょっと困ったチャンになるかもしれぬ。

ふふふふ…っておいイテー、
イダダダダダダダダダ!うわああああああ いでええええ あひいいいい……

……………………………………。

 え、あ、お、終わり…ですか。

 ボロボロである。困ったチャンなどと言ってる場合ではなく、シャワーも浴びずにベッドでへにゃへ
にゃなのであった。