ドライバー

 ドライバーと書くとゴルフ好きの人は、どうしてもクラブの方に頭が行ってしまうと思うが、今回は私の車の専属運転手について書いてみよう。

 タイで日本人がバンコク郊外で働く場合、殆どの人が専属のドライバーがつくか自分自身の運転での通勤になる。(駐在員という立場の人に限るが?)
 前にも書いたが、私の家から会社までは車で約1時間、距離にして約80kmなので、自分での運転では少しきついが専属のドライバーがいるので我慢できる距離・時間である。

 私の専属ドライバーになる彼は、私が働き始めてから4日後に新規採用(3ヶ月の試用期間有)で入ってきた。
 採用の面接には私は立ち会わなかったが、どうやら以前からいる会社のドライバーの紹介であったようだ。
 後で話を聞いてみると、以前はH社で営業の日本人のドライバーだったとの事ある。やはり、採用条件として日本人のドライバーをしていたというのは上位に位置する。

 タイでは有り余るほどいるドライバー連中の中で、たまたま私の専属になった訳だが、性格はおとなしく見た感じは非常に好感が持てる男であった。
 何回か食事やゴルフで出かけたが、道はどこをどう行けば良いかも良く知っていた。道を良く知っているのも日本人からすれば非常に助かるのは当然である。

 その彼だが時々ポカをする。
 採用後3週間目の月曜日、私は毎朝家を6時15分に出かけるが10分、20分待っても来ないのである。一応携帯を持っていたので電話をかけたが出ない。
 会社に連絡をしたら私の判断に任せると言われてしまった。
(通常は出かける時間に来なければ私自身での運転になるとの事)

 30分待ったがどうにもならず、意を決して自分で運転しての通勤になった。 
 この30分は渋滞を呼び寄せるに決して短い時間ではなかった。
 案の定、空港前からの渋滞である。
 8時までに着くのか肝を冷やしたが、途中は何とか120km位で走れたのでぎりぎり間に合った。
 実際、初めてタイで長距離の運転をしたのである。
 緊張という域を越えていたような気がする。


 何とか会社に到着した。
 今まで毎日ドライバーが通っていたのを覚えていて良かった。

 皆が体操をしている時間であった。
 だが、社長から「よく間に合ったな」と一言。
 あの、怒りの社長からの優しいお言葉、これで気持ちが少し柔らんだ。
 ああだとこうだとドライバーが来ない事を話したが、今回はそれほど大事にはならなかった。

 しかし、このドライバーのポカはまだあった。
 私の会社が製品を納めている会社は多くあるが、どこも距離にして150km以上離れている所が多い。
 そこへ行って帰る途中の出来事であった。

 もうすぐアユタヤという近辺で彼は目を閉じ始めたのである。
 <居眠り>である。

 私は出かける前から彼の目のあたりを後部座席から何となく気にしていた。
 まばたきが多かったのである。
 私もそうだが、眠くなると目がとろ〜〜〜んとするか、まばたきが多くなる筈である。
 その症状が出ていたので気にしていた。
 案の定であった。
 後ろから「お前、寝ているのか〜〜〜!!」とついに怒った。
(以前に書いたが私が怒るのは殆んど無いと言って良い??)

 彼は苦笑いしながら「スミマセン」であった。
 スミマセンで済めば警察はいらないとよく言ったものだ。
 「お前に命を預けているのだ」と後に強く説明しなおした。
 警告である。
 何とか会社にはたどり着いた。
 その後は、今回の私の<怒りの注意>で居眠りに対する警告はしないで済むようになった。

 だが、彼には思っても見ない結末が待っていた。

 運転手を上手く使って仕事に役立たせるのもタイでは常識の一部である。
 次回は彼の何ともかわいそうな結末を記す事になる。

 .
 日本ではほとんどお目にかからない「運転手付き」であるが、タイではよく見かける光景である。(ちなみに管理人は自分で運転)運転手が賢かったり気が利いたりすると、とても重宝するので結構引く手あまたらしい。が、なかなかアタリもいないようで、今回のすーさんの運転手のように居眠りするものや、道を知らないもの、遅刻するもの、そして暴走するものもいる。いればいたで結構難しいのだ…。