カミナリ?!

 自分が渡タイした4月は日本でいう真夏だったが、実際は超真夏という表現に値する。通称「水掛祭り」というタイ正月のソンクラーンの時期でもあった。
 雨が少なく40度を越す位の日が毎日続くのである。
 日本の夏は夕立がありその時に雷がなったりするが、タイではこの時期の雷は殆んど発生はしないと言ってよいだろうか。

 そんな自然の雷がない時期の再就職になったわけだが、出社二日目にして早くも社長のカミナリがいきなり落ちたのであった。
(私にではなかったが)

 この時、社長の経営方針と社員に対するホントの姿を知ることになった。

 私の会社は日本ではホントの小企業であり、タイの会社も日系の大企業に比べたら全く問題にならない従業員数の企業である。
(従業員は150人前後で推移している)
 そんな小企業なので、(就業10分前)に日本のラジオ体操の音楽が流れ各セクションで体操をする。体操時間は作業時間外に行うのである。
(前会社は就業スタート後に体操があった)
 その後ミーティングを行い作業に入るという流れだ。

 QCのミーティングはQAルームという小さな部屋で行うが、それが終わった直後、部屋の外で物凄い怒鳴り声が聞こえたのだ。

 何事かと思い、私はすぐその場に駆けつけた。
 そこでは、社長が鬼の様に真っ赤な顔で怒鳴っている。

『お前らは、やる気があるのか〜〜〜〜?!』
『俺が一番嫌いなのは、会社を休む事だ〜〜〜〜!!』

 QCのアシスタントM・SV・Lを集め物凄い形相で怒っていたのだ。
 通訳がその日本語を淡々と訳していたのは、何とも印象的であったが。
 私は27年という長い会社生活をしてきたが、そんな怒り方を聞いたのは始めてであった。これが下請け企業の社長なのだと改めて感じさせられた。

 話を聞いていると、私が赴任する一ヶ月位前からこのQCの社員達が結構休暇を取っていたらしいのだ。私に早い時期にその辺の改善をしろと、遠まわしに言っているようにも聞こえた。
 最初の私へのインパクトとしては、これ以上無い状況であった。
 ただ、社長は月曜日の全体朝礼でも必ず出勤に対してだけは厳しい忠告をしているのは事実である。

 (そして社長はその後も、いつでも・どんな所ででも怒っている)

 私は前会社で、タイに赴任する前に海外派遣研修で東南アジア等の発展途上国へ行った場合の注意事項を教わった。
 そしてもし従業員に注意する場合は、他の従業員がいない場所でするようにと忠告をされた事を思い出す。(あとで逆恨みを受けるからと)

 しかし、社長はそんな事がやれるものならやってみろという性格なのである。
 叩き上げ一代で会社を築き上げた事と、江戸っ子という気質からなのだろう。
 息子である工場長があとで教えてくれたが、社長は怒る事で従業員の意識を
 高めていくというやり方を昔から貫いているそうだ。
(それとストレスを溜めない為にもと・・・)
 そういっている工場長はじめ日本人スタッフも同じ様に怒っているのだが。

 ただ、ここで怒るという言葉は訂正しておこう。
 正しくは<注意している>になるのである。
 タイ人社員が日本人の言った事を正しく行っていれば何の問題もない。
 それが出来ないから注意されるのである。
 (企業なら当たり前の事なのである)

 それが、傍から見ると怒っている様に見えるだけなのだ。
 私にもしっかりその教えは指導された。
 <タイ人が失敗をしたらその場で注意しろと>
 ただ、日本人に不手際があれば社長から<注意>というカミナリが落ちるのは当然という事になる。

 社長は、怒り終わったあと従業員への気使いも忘れてはいない様である。
 それは、最後に『コープクン・クラップ』を必ず言っている。
 これはタイ人からすれば最高の言葉であろう。
 そして注意されるという事は、まだその人間は会社で働いて良いと言う許可を貰った事になるのである。いらない人間には注意しても仕様がないとも言う。
 基本的に私の会社は3ヶ月間が試用期間であり、それまでならいつでもクビを言い渡せる。
 やはり出勤日数と作業態度が重視されるのである。

 これからは、その様な出来事が日常茶飯事になる訳だが、怒るのが嫌いな私としては出来る限り<注意>する場が少なくなるよう様にしたいと思っている。

 管理人から
 さすがに一代で会社を築いた人は違いますねえ。タイ人相手でも日本人相手でも変わらない態度には感服いたします。かくいう管理人の働き先で会うタイ人はやっぱり典型的なタイ人が多いらしく、時間にルーズというか、休みたがりと言うか、まあ使う方としては疲れさせてもらえます。夜に電話かかってきて「明日有給取ります」なんて言われた日には…、すーさんの社長さんなら間違いなくクビかな。。。