ママはムエタイ戦士 

 管理人は自他共に認める格闘技オタク。当然タイの国技であるムエタイにも一時期ハマったこともある。打撃系は少々苦手な管理人であるが、「立ち技最強」の看板を持つムエタイに興味のないはずがない。来タイ当初はよくラチャダムヌーンやルンピニーのスタジアムに足を運んだものだ。そんな管理人の同盟HPであるmickyさんの<タイの日常>の掲示板に「オードリー・ヒップバーン」なる人物が書き込んだ一言が今回のお話の始まりとなった。その一言とは

「2月9日にペッカマイ駅近くの高架線下のリングでムエタイの試合をします。バンコクで試合をするのは多分これで最後になると思うので興味のある方は是非見にきてくださいね」


と言うモノだった。これを読んだmickyさんとたまたまその日会っていた管理人は、mickyさんから「ここはいったいどこ?」という質問を受け、二人で場所について考えることになった。しかしそのような場所は思いつかなかった。と言うかのっけからおかしい場所なのだ。まず「ペッカマイ」と言う駅、これはまあ「エカマイ」駅のことだろうと推察。しかし駅の近くに高架などないのだ…。高架下、つまりはバンコクで言うと高速道路かBTSの下と言うことになる。が、BTSの下ではリングを置くのにも事欠くようなもので、とてもではないがまともな試合など出来るはずもない。ましてやスクムヴィットは下がすっかり道路であって、1メートル程度の植え込みがある程度。そこで、エカマイ駅からはかなり遠いが高速道路の高架下であろうと言うことになった。が、そこをよく通る管理人もそんなイベントをしたことを見たことがなかったので、イマイチ半信半疑。mickyさんはせっかく掲示板に書いてくれたのだから見に行きたいと言い、直接連絡することになっていた。管理人も乗りかかった船と言うことと、試合会場が近そうなことから適当な時間に観戦しに行くことを決意した。
 そして試合当日の夕方。mickyさんに連絡を取ると驚いた一言が帰ってきた。
「場所が二転三転して、サパーンマイあたりって言ってますが、わかります?」
 おおお、なんとタイらしいことだ…。だいたい試合場所自体が直前まで決まらんと言うのはどうやって宣伝するのだ???果たしてお客さんは来るのか?といらぬ考えを起こしはじめたが、よくよく考えると知らないのはオードリーさんサイドだけであって、ただそれだけのことだったと言うことに気づいた。やはりさすがはタイ。
 結局管理人の予定をこなして再度連絡したのはだいたい午後9時過ぎ。それからウィラポーンさんと言うオードリーさんのマネージャーもどきと電話で話をした。彼との会話は以下のような感じ。

ウィラポーン 「サパーンマイのすぐ近くにあるインチャルーム市場の中です」

まお 「その市場はサパーンマイからどっちの方向にあります?」

ウィラポーン 「いや、サパーンマイからすぐだからすぐ分かります」

まお 「だからなんて言う通りなの、そこは?」
(サパーンマイというのはロータリー状になっている場所を指していて、4つの大きな通りの交差点みたいモノだと思って頂きたい)

ウィラポーン 「うーん、ラックシーの方だ…」

まお 「じゃあラックシーの方へ車で行ってどのくらい?」

ウィラポーン 「すぐの所」

しかしそれを聞いた管理人は頭の中に地図が出てこない、と言うかそんな市場は見たことがなかったので、mickyさんと話をすることにする。するとmickyさんがわざわざ通りまで出てくれて近くの状況を報告してくれた。

micky 「近くに<ビッグC>が見えます。だいたい200メートルくらい。通りを来た
ら左側にこの市場があります」


まお 「え?ビッグC?それはサパーンマイから近いところにはないですよ」

micky 「サパーンマイがどこだか分からないんです。市内から来てセントラルデパートが見えました」

まお 「だいたい分かったんですが、ウィラポーンさんの言った場所とはかなり違う…」

 タイ人に道を聞いてはいけないと言う掟を守らなかった管理人がバカでした…。結局それからビッグCを見つけるのに約10分。どこがサパーンマイのすぐ近くなんだ…。そしてその市場はよ〜く見ないと暗くて見つからないようなものでしたが、昔言ったことのある市場だったのでなんとか見つけられました。(実は入り口を通りすぎてバックしたんですけどね)

 そうこうして市場の駐車場に車を入れたところでmickyさんがお迎えに。聞いてみるともうすでに次の試合だと言うことで、大あわてでオードリーさんの所へ。さすが試合前と言うことで非常に緊迫した雰囲気になってました。直接本人に話しかけるのがはばかれるほどだったので、mickyさんに状況を聞いたところ、私と同い年のママさんムエタイ戦士だと言うこと。そしてムエタイでは5戦5勝。今回の試合を持ってしばらく休養するだろうと言うことなど教えてもらいました。それから周りにいるセコンド人とあいさつをしているうちに、オードリーさんは入念なウォーミングアップをしていました。ムエタイは裸足でするんですが、ここは市場の特設リング。ウォーミングアップしている場所もひび割れたきれいとはとても言えないコンクリの上。思わず足の裏ケガしないかと心配してしまいました。そして当然控え室なんて言うしゃれたモノはなく、熱狂した観客の後ろにイスがあってそこでワセリンを塗り、マッサージを受け、精神を集中してセコンドのアドバイスを受けるのです。そこから生きるか死ぬかの戦いの場に向かうのです。生半可な気持ちでは…大変な事態が起きかねません。この瞬間がもっとも緊張するところなんでしょうね。見ている我々もそういう緊張感に包まれる時間帯でした。

 そうしてゴングの時間は刻一刻と近づいていったのでした。

(今回管理人はカメラを持っていってませんでした。写真などは「タイの日常」の中にある「アライ コォー ダイ」でご覧ください)