第三回

 さてさて「中年・壮年の加速度的嵌まり方ロケット」の補助ブースターの2つ目。それは「青春の再来」というブースター。一種の摩耶かしでもあるけども。これはかなり強力なブースターです。

 若い人たちには「若さ」という何モノにも変え難いものがあります。
 いろんな可能性を試せ失敗も許されるとてもいい時期です。私にもそういう時期が確実に存在しました。誰にでも公平に存在します。

 青年であった人も齢を重ねて行くにつれ青春期のあの張りのある時期はどうあがいても取り戻せません。歳に見合った社会的な責任や家族の幸せの為に淡々と人生を頑張ります。昔は人生50年が今は80年です。30年も人生が長くなった。

 30代後半から50代前半にかけてはそこそこ仕事もこなせるし若干のお金も自由になる年代です。ゴルフなどの趣味に傾く人々もいるしそれぞれの人生の息抜きを見つけだす人も多いはずです。

 そういった時期に何気なしにぽ〜んとタイの土を踏んだ時にタイという国がどう絡むのでしょうか?

 初めて団体旅行で来られた方々は時間的な自由もあまりなく朝から晩まで予定がぎっしり。それこそ分単位で観光地と土産物店の順番をガイドさんに言われるままこなすので精いっぱいかな。

 例え近くでネオンの彩りが呼んでいても異国の地の心配や恐さもあって心を残しながらも帰国というのが大体のところではないでしょうか。

 一方、ビジネス絡みで来たり、少し慣れて単独での旅行などで何度もタイを訪れる人達は大体予想された結果になってしまう場合が多いようです。余程の潔癖な倫理観の持ち主か堅物(本当はこの手が一番危うい存在)以外はまず一度は通る道です。タイ女性との出会いです。

 私も接待などでお客さんの希望で歓楽街へ連れて行きますが簡潔に言って2つのタイプに別れます。一つは単に遊びで割り切ってしまう人種。これはある意味、事後処理と言うか後腐れがなくその場限りで終わってしまう理想的な(?)かたちです。タイでの遊興を息抜きとして捉えその対価としてそれなりのお金を使います。

 もう一つが完全に「はまる人種」。これが一番厄介なのです。タイという「異国の地の舞台」でもう戻って来ないと諦めていた「青春劇」が始まってしまうのです。この状況に一度火がつくと
こちらがいくら制止してももうとまりません。

 青春が戻る・・・一種のまやかしです。大部分の中年・壮年が最初に出会うのはいわゆるお水系の女性です。彼女達は仕事ですから相手が親の歳程も離れてもお金の為に甲斐甲斐しく世話をします。2〜3度会えばもう恋人風を演じます。ここで相手役が出来る訳です。

 数回の出会いの間に男性側の思い込みが絡んでまやかしの青春が再燃する。相手は20歳前半の女性、「商売だぞ、商売!」と思いながらも彼女達の本心とも錯覚させるような見事なテクニックで徐々に深みに引きずりこまれるのです。

 この強力ブースターの効き目は若い頃にあまり遊んでない人にはより効き目があります。どこに行っても日本人という事でもてる。「日本人=金持ち、優しい、騙し易い」という考えなどを彼女達が持ってるということをつゆ程にも疑わずに・・・・・。
 おまけに日・タイ経済格差も手伝って自分が小金持と錯覚してしまう事も多い。

 一般のタイ人女性というのは恋愛に関しては結構コンサーバティブです。一般の観光客が一般の女性と映画のように短期間に親しくなれるのはかなり稀な事です。どうしてもお水系の女性との接触が多くなります。言葉の壁をやわらげるのは彼女達のカタコトの日本語です。

 1〜2回会っただけでさえも恋人風に振舞ってくるのですから免疫のない男性程、嵌まり方が加速度を増します。普通に考えれば「やっぱり、おかしいぞ!?」と思われるシチュエーション自体が振り返れない。
 もう各種ブースターエンジンが加速度的にロケットを押し上げてるので振り返る余裕がなくなってるのでしょう。

 これが一般的な「加速度的嵌まり方ロケット」の打ち上げです。

 次回は「エセ恋人の裏側」です。