#02 コースデビューの緊張感

 3月26日がコースデビューの日。さしずめ運動会の前日ってとこでしょうかね。スポーツが得意な子供なら明日が自分の晴れ姿!てなもんでワクワクして待つのでしょうが。こちとら小学校の運動会で2位入賞というのは障害物競走のようなある部分ハンディがある種目に限っての事です。
 師匠から「明日朝6時にソイ・トンローベンツ前で会いましょう」と電話がある。「本当にこんなヘタッピと行ってもいいんですかぁ?」と最後の抵抗を試みるも「大丈夫です!死にはしませんから、明日は楽しみましょうよ。気持ちいいっすよ!で、最初だからね、簡単なコースか池が沢山あるコースとどっちにするかまだ迷ってるんですよ」「最初だから簡単な方じゃないんですか?」「まぁ・・・どっちにするか考えておきますわ」と言って電話が切れる。
 電話の後、何となく素振りらしき動作をするけども鏡に映った自分のフォームはそれ何?って感じだった。

 取りあえず必要なものをパックする。真新しいゴルフシューズ(今まで何か靴底に針みたいなものが打ってるかと思ったら大間違い!ハイテクなものに様変わりしている)と真新しいキャップに適当に選んだウェアーとタオル(必携品)を専用バッグがないからバックパックに詰めてベッド傍におく。寝ようと思うのだけどもその日は結構朝寝坊した日であったのでなかなか寝つけない。仕方なしにコンピューターでゲームをやってみる。小一時間もやってると少し眠くなってきたので横になるがまた目が冴える!いろいろと考える「球がいろんな方向に行ってしまってまともに1ホールが終了しないのではないのか・・・!?」「パター全然やってないけど入るのか・・・・・?」などなど消えてはまた別の不安が出てくる。
 その内1時間ぐらいは寝たようだ。こういう中途半端な睡眠は一番悪い。

 タクシーを拾っていざ、待ち合わせ場所のソイ・トンローベンツ前へ。「まぁ、ここまできたらしょうがないわ、開き直ってやるしかないかな。1ホールが終わらなかったら勘弁して下さいと素直に謝ろう」などと思いながらタクシーに揺られる。早朝だから程なくしてソイ・トンローベンツ前に着く。そこから師匠に電話。
 どうもそれから起床して用意して出てくるのではないか!?10分ぐらいでいつもの見慣れた車がスルスルと目の前に。
 「じゃぁ、行きましょうか!?」と中から声が掛かる。運転をしながら「さて、mickyさん、どっちのコースがいいですか?易しいのと池がいっぱいあるコース」「そりゃぁ、易しい方でしょう!」「じゃ、そうしましょうか!」といいながら両人とも食事をしてないので途中でどこかで朝食の代わりになるものを買う。バナナとドーナツ。ドーナツは失敗だった。まだ早朝だったので昨日の売れ残りだったようで固い!

 車中、口をもぐもぐさせながらいろんな話題に飛びながら目的地に向かう。戦闘機のお値段は幾らとかタイの国家予算は幾らだの・・・全くこれから行われるゴルフに関する話題は一つもない。3〜40分でコースに着く。エントランスに着くとキャディさん達がクラブを下ろしてくれる。駐車場に車を止める。それからがどう対処していいのかわからないので師匠の後にくっついて行くだけ。車の中で靴などを履き替える。ちゃんと履き替える場所があるのかと思ったのだが。準備をしてレセプション・カウンターへ行き申し込む。

 900バーツだったと思う。師匠が期限の切れた割引カードを一緒に出すが問題なく割引価格でオッケーとなった!?こういう曖昧なとこはなかなか良いではないか。
 I LOVE THAILANDである。
 さて、コースに出る階段を降りて行くのだがその辺りからギクシャクした歩行になってる。同じ側の手足が同時に出るような感じ。コースに降りる!
 目の前が緑、緑して芝の匂いがなかなかいい。朝が早いのでどうも後続はないようなのでちょっと安心。キャディさんが待機してる方向に行く前に柔軟体操を師匠を見ながらやるが顔は強張っていて一つも緊張はほぐれない。

 取りあえずコース前にあるパターの練習場でパターを打ってみる。前日にパターを買って数回その店で打ったのと打ちっぱなし場で数回練習し、こうやって打つと言われたのみ。恐る恐るやってみるが案の定別の方向へ行くだけ。「ひやぁ〜、これじゃ1ホールすら終わらないのではないか!」という不安が込み上げる。キャディさんと対面。そこで師匠が私のキャディさんに「この人今日が初めてのコースでまだ下手だから宜しく頼みます」と頼む。私も「本当に下手だから頼むね!」と再度念押しをする。
 いよいよティーショットの場面が来た!
 頭の中はもう「当たるのかいな?」という文字がグルグルする。

 お客さんがまだ少ないのでティーショット周りには草むしりのキャディさんが廻りに7〜8人居た。その人たちが皆、私を注視する!「いや〜ん、見ないで!」なんて訳のわからんことを呟く!キャディさんが前方で草むしりをする他のキャディさんを見つけ声をかける。「お〜い、この人下手だからどいて!」と。何だか情けない気持ちになるけど本当だからしょうがない。師匠から声が掛かる。「はい、息を吸って!吐いて!は〜い、肩の力を抜いて・・・駄目、まだ、固い!力を抜いて!」と。

 もう緊張が最大限に上がった時点でついにクラブを持ち上げ振った!
 ・・・・・記念すべき第一打は池に消えて行きました。
 でも、そこで緊張が少し緩んだけれども、その後はもう「このぬかるみはどこまで続くぞ!」という感じ。チョロやダフりを連発し短いショートパットも外しメロメロです。ですがキャディさんは毎回「落ち着いてね、ゆ〜っくりでいいのよ!」と声を掛けてくれます。しかし、脇からは師匠の容赦ない指摘が飛ぶ!キャディさんが耳元で囁く「何よ、あの若造!えらそうな態度して。ね、お客さん、あの人何?」と「あの人はね、私のゴルフの先生だからいいんだよ。だって心配だから何度も注意してくれるんだよ」と答える。
 パットでも数十センチでもOKは出さないから(練習の為)それも不評を買う。
 いやぁ、師匠、悪役ですいませんな!

 この後、数度コースに出るのだがコース上ではキャディさんは唯一の味方だから応対を丁寧にしようとその時思った。クラブを受け取る時とか渡す時に必ず「ありがとう」と言うようにした。また、結構、次のショットまで話をするようにもした。
 初回以降こういう雰囲気づくりで楽しくコースが回れるんだなと実際感じました。師匠もよくお相手のキャディさんと話してます。初めてのコース、ドライバーとパットと7番アイアンとピッチングとサンドエッジのみ。おかしいのはバンカーに入っても全部1回で出せたこと。これはピッチングの打ち方を集中的に教わってた成果だと思う。キャディさん曰く「この人、他は下手だけどバンカーは上手ね!」って。恐いもの知らずだからですよ!

 結果は87・89の169でした。40cmのパットをはずしたりの50パットが大きいな痛手。でも、何とか終わることが出来てホッとした。キャディさんにはちょっとチップを弾みました。ヘタッピーにつき合ってもらい毎回のショットの度に根気強く声をかけて貰ったお礼です。
 終わってシャワーを浴びて服を着替え師匠に感想を聞かれた。「どうですか?」「・・・・・いやぁ、ホント楽しかった!」と自信を持って答えた。
 単に面白いではなく本当に楽しかったからです。まぁ、スコアは最悪ですが何か新しい体験をしたという満足感で一杯でした。たった4回の打ちっぱなし練習で望んだコースデビュー。タイのゴルフ場に感謝です。

 「雑感」:記念すべきコースデビューの場所は「タノン・ビュー・ゴルフクラブ」でした。コースは6385ヤードです。バンコクから50キロ郊外のミンブリという場所にあります。とても平坦なコースでちょっと高いとこからなら全部見渡せそうなコース。コース自体は簡単なので調子の悪い時に来てここで調子を取り戻すにはいい便利なコースだそうです(極楽タイランド:ゴルフ場ガイドより)
 
コースに出る前は本当にどうなることかと思いましたが後半少しずつ落ち着きは取り戻したものの師匠から教わったすべてのルーチンはどこへやらという状況でした。未だどんなコースだったのかが思い出せない。最近回ったコースは結構、概要を憶えてますがここだけはイメージがない。それほど自分を見失っていたのではないかと思います。
 終わってみるとなんやら得体の知れない満足感があって楽しかったなぁと言う余韻が残りました。多分、一緒に回ってくれた師匠は私以上に気疲れしたのではないかと思いますよ。悪役も一手に引き受けてたしなぁ。